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談志、たけし、太田光に続けるか ウエストランドと爆笑問題の違いとは?


「M-1グランプリ2022」で毒舌漫才のウエストランドが優勝して話題だ。コンプライアンスが厳しい今の時代に毒舌芸人を継承できるのか? 「アウトとセーフの基準はなんだ? テレビの笑いの差別的表現3つの疑問」(BEST TIMES 2022.98.16)を投稿した元芸人の作家、松野大介氏が分析する。


ウエストランド

 

高田文夫、ウエストランド『M-1』優勝に希望感じる 談志・たけし・太田光に連なる“本音を言う笑い”系譜も指摘

 この記事ではM-1翌日の19日、放送作家の高田文夫さんのラジオ番組でのコメントを引用している。

「いやーでも本当にスカッとしたよ。みんなが今、コンプライアンスだって、マスコミ業界もさ、笑いの世界も物を言わなくなったじゃん。ちょっと息苦しい時代になったっていうのは、肌でみんな感じているんだよな。それをスカッと笑いにしてくれたから」

「談志がいて、たけしがいて、太田くんがいて、井口に正当に後継者として、きちんと受け止められると思うよ」

 最大級の賛辞を送られました。

 ちなみに高田文夫先生は30年ほど前、コンビ解散後の私にピンネタで出場させてくれたお笑いゴールドラッシュという大会で優勝させてくださった方です。

 M-1の審査員のひとりが「こういうネタは劇場では僕らもやっている」という趣旨の発言をした。つまりテレビではしない(できない)。

 優勝理由はウエストランドが一番面白かったことが大きな要因だが、「コンプライアンスがうるさい中で、こういうネタをどんどんテレビでやって欲しい」という期待料も含まれたと思う。私に言わせれば「キャリアある芸人は自分たちで毒舌ネタやれよ」とも思うが、立場が大きくなると難しいのだろう。

 

◆太田光の見事な即応性に衝撃・・・

 

「M-1チャンピオン・ウエストランド、事務所の先輩・爆笑問題からのアドバイス明かす」(クランクイン!)

 上の記事によれば、

「太田さんから『とにかくお客さんを笑わせろ』と。『目の前にいるお客さんと、テレビを見ているお客さんを笑わせることがすべてだから』っていう。『審査員とかじゃなく、目の前のお客さんを笑わせることに集中しろ』っていうのは言われたので、それはできたかなと思います」

 談志、たけしのふたりはさておき、ウエストランドは事務所の先輩、爆笑問題に近づけるか?

 私の昔話ですみませんが、私がピン芸人で漫談をやっていた28年くらい前、2~3度、爆笑問題と同じネタライブの舞台に立ったことがあります。

 池袋の、サンシャイン60ビルのすぐ近くの大きなホールの時、売れ始めていた爆笑問題がトリ、私がトリの前の出番。その日か前日に関東地方で大きめの地震があった。

 それを爆問は冒頭のネタにした。

「大地震がきてもこのへんは建物がしっかりしてるから大丈夫です。サンシャイン30が2つ出来るだけで」

「折れてるじゃねえかよ!」

(あくまで私の記憶なので言い回しは多少違うかもしれません)

 袖で見ていた私は昨日今日のことをギャグにした鮮烈さに衝撃を受けた。「ネタ」は何ヵ月もかけて作るものとたいていの芸人は考えていたから。

次のページ問われる瞬発力とギャグ化のセンス

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松野 大介

まつの だいすけ

1964年神奈川県出身。85年に『ライオンのいただきます』でタレントデビュー。その後『夕やけニャンニャン』『ABブラザーズのオールナイトニッポン』等出演多数。95年に文學界新人賞候補になり、同年小説デビュー。著書に『芸人失格』(幻冬舎)『バスルーム』(KKベストセラーズ)『三谷幸喜 創作を語る』(共著/講談社)等多数。沖縄在住。作家、ラジオパーソナリティー、文章講座講師を務める。

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